コロナ問題による経営難に関するQ&A

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新型コロナウイルスの影響による
経営難にお悩みの事業者の⽅へ

当事務所は、企業の経営状況に応じ、事業再生や再編に関するご相談に積極的に取り組んでおり、多数の取扱い実績を有しております。
新型コロナウイルスの影響による経営難にお悩みの事業者の方々のお力になりたいと思いますので、当事務所「コロナ禍対策チーム」あてに、是非一度ご相談下さい。

電話でのお問い合わせ06-6201-4456

Q1

当社はいわゆる中小企業です。コロナ問題で、資金繰りが厳しくなっていて,このままでは金融機関への返済や,家主への賃料の支払いができそうにありません。どうすればよいでしょうか。

A1

  • 1. まずは,固定費の支払いの削減を検討するべきです。金融機関への返済,賃料の支払い,公租公課の支払いなどについて,支払い条件の変更や支払い猶予が受けやすくなっています。
  • 2. 自助努力だけでは資金繰りが回らないときには,私的整理手続による再生の検討が必要です。特に,中小企業再生支援協議会による新型コロナ感染症特例リスケジュール計画策定支援などの検討をするべきです。

【解説】

1. 固定費の支払いの削減の検討
資金繰りが厳しく,金融機関への支払い等が困難になったときには,固定費の支払いの削減を検討するべきです。新型コロナウィルス感染症の影響によって,各種の支払い条件の変更や,支払い猶予が受けやすくなっています。具体的には以下のとおりです。
① 金融機関の返済条件の緩和
固定費の支払い削減としてまず考えられるのは,金融機関への返済条件の緩和要請です。金融機関からは,例えば一定期間利息の支払いだけとして元本の返済を猶予してもらうなど,条件変更を受けられる可能性があります。
金融庁は,各金融機関に対して,新型コロナウィルス感染の影響拡大をふまえて,「元本・金利を含めた返済猶予等の条件変更について,迅速かつ柔軟に対応すること」を要請しています。これを受けて,各金融機関は,柔軟に条件変更に応じています。
まずはメインバンクに相談しましょう。下記のパンフレットも参照してください。
https://www.fsa.go.jp/ordinary/coronavirus202001/06.pdf
② 賃料の支払いの猶予
賃料の負担が大きいときには,家主に対して,賃料の減額や支払いの猶予を要請することを検討しましょう。
国土交通省は,不動産関連団体を通じて,賃貸用ビルの所有者等に対して,新型コロナウィルス感染症の影響により,賃料の支払いが困難な事情があるテナントに対しては,その置かれた状況に配慮し,賃料の支払いの猶予に応じるなど,柔軟な措置の実地を検討するように要請をしています。
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001339166.pdf また,国土交通省は,賃料の支払いの減免や猶予に応じた不動産所有者に対して,公租公課の支払い猶予や固定資産税の減免等優遇措置を講ずるものとしていますし,家主は,新型コロナウィルス感染症の影響がなくなればまた賃料の支払いが問題なく見込めるのであれば,柔軟に対応してくれる場合があります。
https://www.mlit.go.jp/common/001342197.pdf
③ 公租公課の支払い猶予
税金や社会保険料などの公租公課についても,支払い猶予が受けやすくなっています。
国税庁や総務省は,国税,地方税それぞれについて,一定の要件の下,最大1年間の支払い猶予を認めています。
また,厚生労働省も,社会保険料について,一定の要件の下,最大1年間の支払い猶予を認めています。
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu_konnan.html https://www.soumu.go.jp/menu_kyotsuu/important/kinkyu02_000399.html https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10925.html
2. 私的整理による再生
金融機関等に対して,特に複数の金融機関と取引をしている場合などでは,個別の交渉で返済条件の緩和を要請するだけでは,対応しきれない場合もあるでしょう。
そのようなときに,借入のある全ての金融機関を相手に,返済条件の緩和(リスケジュール)や,場合によっては借入金の一部カットを求めて交渉する方法があります。これが私的整理です。
私的整理には,いわゆる準則側の私的整理手続があります。これは,私的整理の内容や手続について,一定の準則に則って,手続を支援しまたは主催する中立な機関が関与して,私的整理手続を進めるものです。具体的な例として,事業再生実務家協会による事業再生ADRや,中小企業再生支援協議会による手続といったものがあります。
このうち,中小企業再生支援協議会は,従来から再生計画の策定支援をしてくれる機関ですが,新型コロナウィルス感染症の影響によって資金繰りに窮している中小企業に対して,新型コロナ感染症特例リスケジュール計画策定支援(特例リスケ)を行っています。これは,新型コロナウィルス感染症の影響によって資金繰りが悪化した中小企業について,金融機関から最大1年間の返済猶予を受けるために,中小企業再生支援協議会が特例リスケ計画の策定支援をするとともに,金融機関との間に入って調整をしてくれるというものです。
この特例リスケの詳細は下記を参照してください。
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/2020/200406saisei.html
3. 法的倒産手続
金融機関からの支援(返済条件の変更)が受けられない場合や,金融機関に対する返済条件の緩和だけでは資金繰りが回らず,リース債権者や商取引債権者に対する支払いも止めなければ資金繰りが回らないときには,法的倒産手続を検討するべきです。
法的倒産手続も,破産といった清算型のものだけでなく,民事再生という再生型の倒産手続もあります。民事再生は,手続が開始されると,全ての民事再生前の債権者に対する弁済が禁止されます。そして,再生計画の中で,債権の相当部分について債権カットを受けたうえで,残りの部分についての返済方法を定めます。その再生計画が債権者の決議に付され,これが可決されたときには,債権カットの効力が生じ,事業を再生していくことが可能となります。

Q2

当社の資金繰りの状況からして、固定費の支払いの削減だけでは破綻してしまいそうです。新規借入を検討する必要がありますが、コロナ問題で影響を受ける事業者向けの融資には、どのような融資があるでしょうか。また、融資を受けるに際しては、どこに相談すればよいですか。

A2

新型コロナウィルスの影響により、資金繰りに窮している中小規模事業者に対する緊急融資制度として、国は、(1)政府系金融機関による融資および(2)民間金融機関による信用保証付融資、という大きく分けて2つの制度を用意しています。
これらの融資の利用を検討するときは、まずは現在取引のある金融機関に相談するのがスムーズでしょう。このほか、融資申込先となる日本政策金融公庫や商工組合中央金庫、また支援策全般の相談については各地の商工会議所などが窓口となっています。

【解説】

1. 新型コロナウィルスにより影響を受ける事業者に対する国の融資(以下「コロナ対策融資」といいます)制度は、以下の経済産業省のサイトにまとめられています。
https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf
コロナ対策融資には、大きく分けて政府系金融機関による融資(以下◆)および民間金融機関による信用保証付融資(以下■)の2つの制度があり、売上高の前年同月比減少幅により利用できる制度が異なりますので、以下、売上高減の程度に応じて利用できる制度を挙げます。これら国による融資制度のほか、国が補助を行う都道府県等による制度融資(大阪府の「新型コロナウィルス感染症対応資金」等)が用意されていることがありますので、地域の情報も併せてご確認ください。
なお、これら保証や貸付は、既に受けた債務の条件変更を行っていることだけを理由には支援対象から外れることはない、とされていますので(ご参照:経済産業省・中小企業庁作成のパンフレットhttps://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/shien-flyer.pdf)、既存の借入債務についても金融機関等と返済条件変更等についての交渉を行いつつ、コロナ対策融資の利用を検討することが考えられます。
売上前年同月比20%以上減の場合
■セーフティネット保証4号

(内容)

信用保証協会が借入債務の100%を保証。保証料・利子減免制度有り。

(対象業種)

全業種

(保証枠)

一般保証・セーフティネット保証とは別枠で2.8億円

(手続窓口)

民間金融機関等(民間金融機関がワンストップで市区町村への認定申請・信用保証協会への申込手続を行う。)

売上高前年同月比15%以上減の場合
■危機関連保証

(内容)

信用保証協会が借入債務の100%を保証。保証料・利子減免制度有り。

(対象業種)

全業種

(保証枠)

一般保証・セーフティネット保証とは別枠で2.8億円

(手続窓口)

民間金融機関等(民間金融機関がワンストップで市区町村への認定申請・信用保証協会への申込手続を行う。)

売上高前年or前々年同期比10%以上減の場合(旅館・飲食店・喫茶店営業)
◆衛生環境激変対策特別貸付

(内容)

日本政策金融公庫による無担保融資。基準金利(振興計画の認定を受けた生活衛生同業組合員は基準金利▲0.9%)。

(対象業種)

旅館業、飲食店営業、喫茶店営業

(保証枠)

別枠1000万円(旅館業は別枠3000万円)

(手続窓口)

日本政策金融公庫

売上高前年or前々年同期比5%以上減の場合(※セーフティネット保証5号は売上高「前年同月比」5%減の場合)
■セーフティネット保証5号

(内容)

信用保証協会が借入債務の80%を保証。保証料・利子減免制度有り。

(対象業種)

全業種

(保証枠)

一般保証、危機関連保証とは別枠で、セーフティネット保証4号と併せて2.8億円

(手続窓口)

民間金融機関等(民間金融機関がワンストップで市区町村への認定申請・信用保証協会への申込手続を行う。)

◆新型コロナウィルス感染症特別貸付

(内容)

日本政策金融公庫による無担保融資。当初3年間基準金利▲0.9%、4年目以降基準金利。特別利子補給制度、既往債務の借換制度の適用あり。

(対象業種)

全業種

(融資枠)

中小事業6億円、国民事業8000万円(いずれも別枠)

(手続窓口)

日本政策金融公庫

◆商工中金による危機対応融資

(内容)

商工中金による無担保融資。当初3年間基準金利▲0.8¥9%、4年目以降基準金利。特別利子補給制度、既往債務の借換制度の適用あり。

(対象業種)

全業種

(融資枠)

6億円(別枠)

(手続窓口)

商工組合中央金庫

◆新型コロナウィルス対策マル経融資(小規模事業者向け)

(内容)

日本政策金融公庫による無担保融資。当初3年間経営改善利率▲0.9%。特別利子補給制度、既往債務の借換制度の適用あり。

(対象業種)

全業種(小規模事業者)

(融資枠)

1000万円(別枠)

(手続窓口)

日本政策金融公庫

※上記のほか、⽣活衛⽣関係の事業者(⽣活衛⽣関係の事業者は次のサイトをご参照:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/seikatsu-eisei/seikatsu-eisei03/01.html)向けの融資制度として、日本政策金融公庫による「生活衛生新型コロナウィルス感染症特別貸付」、「新型コロナウィルス対策衛経融資」が設けられています。詳しくは同公庫のウェブサイト等でご確認ください。
2. コロナ対策融資の相談窓口について
上記のとおり、信用保証付融資については民間金融機関がワンストップ窓口となっていることから、コロナ対策融資については、まずは取引先金融機関に相談されることがスムーズだと思われます。
このほか、経済産業省の以下の各サイトもご参照ください。
「資金相談特設サイト」
日本政策金融公庫、商工組合中央金庫、信用保証協会を利用した融資について、インターネット・郵送による申込みや電話相談などを案内しています。 https://www.meti.go.jp/covid-19/shikin_sodan.html
「新型コロナウィルス経営相談窓口」
支援策全般に関する相談窓口など。 https://www.meti.go.jp/covid-19/sodan_madoguchi.html

Q3

会社が私的整理や民事再生によって債務の整理をした場合、現経営者は、そのまま経営を続けることができるのでしょうか。

A3

債務の整理を行ったからといって、当然に現経営者が退陣を求められるわけではありません。再建手法や事業の状況によっては現経営者が引き続き経営に関与することも可能です。

【解説】

(1)再建手法の二つの「型」
私的整理手続や民事再生手続を利用して債務の整理を行い、事業再建を実現する方法としては、対象事業の引受先となるスポンサーの支援を受けるスポンサー型と、債務者である会社が自らの営業努力やリストラにより再建を目指す自主再建型の二つの可能性があります。
どちらの方法を選択するかは、複数の要素を考慮して判断することになります。
現状の債務負担が過大ではあるものの、収益力が維持されているか、落ち込みが一時的なものであるため、債務免除やリスケジュールに応じてもらえれば事業継続が可能であるという場合や、採算事業と不採算事業を切り分けて前者のみを残す作業を自力で行うことができる場合などには、自主再建を実現できる可能性があります。
これに対し、①短期的な資金繰りが危機に瀕しており、直ちに資金投入が必要な場合、②税金や社会保険料など、整理の対象にすることができない(減免を受けるのが困難である)債務が多く、現在の法人格を維持したまま再建を図ることが困難である場合、③収益力を改善するために一定の設備投資が必要であるがその資金がない場合、④採算事業を継続しつつ不採算事業の廃止を行う余力がない場合などは、スポンサーの支援を受けることが再建を実現するために必要となってきます。
スポンサーによる支援は、事業譲渡、会社分割などの方法により、債務者からスポンサーに対して事業を承継させる方法や、株式譲渡を行って債務者の経営権をスポンサーに委譲する方法で行われます。
(2)交代か続投か
自主再建型の手続きでは、現経営者が会社に残り、弁護士等のアドバイザーの助力を得ながら引き続き経営にあたることが一般的です。
一方、スポンサー型では、スポンサーに経営権が移ることになりますので、現経営者は経営から退くことになるのが一般的ではあります。
しかしながら、スポンサー型であっても、対象事業の運営に現経営者のノウハウが欠かせない等の理由で、スポンサーから引き続き経営にあたることを求められる場合もあります。
また、一部の事業をスポンサーに承継して経営のスリム化を図った上で、残った事業について現経営者が引き続き舵取りを行う場合もあります。
このように、自主再建の場合はもちろんスポンサーの支援を受けて再建を図る場合でも、現経営者が愛着ある事業の経営を続けられる可能性があります。
再建方法の選択については、事業再生の経験が豊富な弁護士にご相談ください。

Q4

経営者である私は会社の債務を保証しています。会社が私的整理や民事再生手続きを行った場合、保証人である私は債務の履行を請求されますか。会社の債務を払えるほどの財産はないのですが、破産するほかないのでしょうか。

A4

保証人として債務の履行を請求されることは避けられませんが、「経営者保証に関するガイドライン」を利用するなどして、一定の生活費や再出発に必要な資金を手元に残しつつ、保証債務を整理することができないかを検討する余地があります。早期に弁護士にご相談されることをお勧めします。

【解説】

会社がやむなく私的整理や民事再生手続き等の倒産手続きを取った場合、会社の主債務について期限の利益を喪失し、経営者が会社の債務の保証人となっている場合には、保証債務の履行を求められることになります。
そのため、経営者が保証人となっていることが多い中小企業について、こうした保証債務の存在が、経営者が早期に事業再生を決断することを阻害してはならないということから、「経営者保証に関するガイドライン」が策定されています。このガイドラインには、会社の主債務の整理を行う場面で、経営者の保証債務の整理についても公正・迅速に行うための中小企業側及び金融機関側の対応についての準則も定められており、基本的には、各金融機関は、この準則を遵守して対応していますので、ご懸念の点についても、これを利用することが考えられます。
「経営者保証に関するガイドライン」の適用対象となる保証債務は、原則として、①主債務者が中小企業であること、②保証人が個人であり、主債務者の経営者(またはこれに準ずる者)であること、③主債務者及び保証人双方が弁済について誠実であり、債権者の請求に応じて財産状況等について適時適切に開示していること、④主債務者及び保証人が反社会的勢力ではなく、そのおそれもないこと、等の要件を満たす必要がありますが、要件を満たす場合には、ガイドラインに基づき、金融機関と適切な協議を行うことによって、財産状況等に応じて弁済計画を立て、返済しきれない債務残額については免除を受けることができる可能性があります。また、多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際には、一定の生活費等を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けることを認めてもらえる余地もあります。
資金繰りの悪化で会社が到底立ち行かなくなる前に、早期に債務の整理について決断し、適切な手続きを選択することが、会社の事業再生にとっても望ましいですし、やむなく廃業せざるを得ない場合の経営者のリスタートにとっても望ましいと言えます。
事業再生の経験豊富な弁護士に、早期にご相談されることをお勧めします。